2016年度国立医学部入試の志願者数は18,342人で、昨年度より657人減少しました。一方、私立の志願者数は84,860人で、昨年度より2460人増加しました。いままでの増加ぶりが異常だったので、ここで少し受験者の動向が落ち着いたといえるでしょう。医学部ブームに乗って、イメージや憧れが先行し医学部を受験しようと思ったものの、過酷な努力を要する現実の壁に直面した受験生が方向転換を迫られたとみることができます。
また、本格的に新課程カリキュラムになったことで現役生有利の入試になったことも、志願者数減少の一因といえます。とくに再受験者の多くは旧課程で勉強していたはずなので、あらたに数学や生物などを範囲を広げて勉強し直さないといけないという苦境に立たされます。そういう意味で、社会人が一般入試で受験するには一つの壁があり、現実的にはとても難しいのです。
医学部は多くの他学部と異なり、職業に直結します。そのため、医師に不向きな人が受験し、医学部に入学すると、将来的に患者に実害が発生する危険性があります。誰でも安易に目指すべきではないといえます。むしろ、学力の水準の高さは当然のことながら、一生患者のために自分の身を捧げる覚悟のある “人格者” に、ぜひ医学部に入学してもらいたいものです。臨床医になるのであれば、やはり “医師” 以前に “人間” としての適性や資質がとても重要な要素となるでしょう。
2040年には、医師が余る時代がやってきます。これからの時代では、より良い医師が求められ、淘汰の時代が必ずやってきます。そのためにも、今から医学部を目指す人は、確固たる英語力を身につけ、外国人の医療従事者や患者ともスムーズに交流できる国際性を身につけたり、高齢者医療において多くの高齢者とうまくコミュニケーションをとりながら、地元に密着した医療を志すなど、自分なりに時代のニーズに応じた生き方を考える必要があるでしょう。